はじめに
「人は血管とともに老いる」
これは、19世紀の医学者ウィリアム・オスラーの有名な言葉です。
私たちは普段、体力の低下や肌のシミやシワなどを「年齢」のサインとして受け取りますが、「血管年齢」という言葉があるように、実は血管も若さを左右する一つの指標となります。
◆血管力とは?
単に血管が丈夫であるかどうかだけではありません。
1.しなやかさ(血管の弾力性)
2.運搬力(酸素や栄養を体の隅々まで届ける力)
3.修復力(ダメージを受けた血管を治す力)
この力が高い状態こそが、「血管年齢が若い」ということになります。
しかし、どれだけ血管自体をケアしようとしても、そこを流れる血液自体がドロドロで滞っていたらどうでしょうか?
しなやかなホースでも、中を流れる水が泥のように濁っていればスムーズには流れませんし、ホースそのものも徐々に傷んでしまいます。
ホースであれば新品に交換できますが、私たちの血管は取り替えられません。だからこそ、日々の「メンテナンス」が大切になります。
目次
瘀血(おけつ)とは?
「瘀血」とは一言でいえば、「血液の粘度が高くなり、血の流れが悪くなった状態」を指します。
私たちのこころや体をのびやかに保つためには、きれいで新鮮な血液が全身をいきいきと巡っていることが欠かせません。
血液は、酸素や栄養を届けるだけでなく、老廃物を回収し、体を温め、精神の安定にも関わるなど、まさに生命を支える重要な存在です。
ところが、この大切な役割を担う血液が、時に体の不調を引き起こす“元凶”となることがあります。
血液が汚れたり、流れが滞ったり、固まりやすくなったりすると、それは健やかな巡りを妨げ、身体の各所にさまざまな症状を生み出します。
中医学では、このように 体に害を及ぼすようになった血液 のことを「瘀血(おけつ)」 と呼んでいます。
瘀血は単なる血行不良とは違い、「血の質」「流れ」「通り道」のすべてにわたって問題が生じた状態であり、放っておくと痛み、冷え、老化、婦人科トラブルなど、慢性的な不調の土台となってしまいます。
瘀血をチェックしてみよう!

中医学では「瘀血」は、体が発している重要な異常のサインと捉えられています。
中国国内の研究では、瘀血の背後には約414種類もの病気が関係していると報告されており、その広範な影響力から、古くから「瘀血は百病の源」「瘀血は万病のもと」という言葉が伝えられてきました。
つまり瘀血は、単に血の巡りが悪いというレベルを超え、痛み・冷え・自律神経・婦人科・皮膚・精神面・老化 にまで影響を及ぼす、“全身に波及する体質的トラブル” といえます。

血管を知ろう!
人間ひとりの血管をすべてつなげると、その長さは約10万km。これは地球2周半に相当します。この長大な血管ネットワークを通して、人間の生命維持に欠かせない酸素や栄養が、約40兆個ともいわれる細胞一つひとつに届けられています。
血管は大きく分けて3種類に分類されます。
①動脈:血液を送り出す血管
動脈は、心臓から全身へ向かって血液を送り出す血管です。
酸素や栄養を豊富に含んだ血液を、勢いよく運ぶ役割があります。
②静脈:血液を心臓へ戻す血管
静脈は、全身を巡った血液を心臓へ戻す役割を担います。
老廃物や二酸化炭素を回収する“帰り道”の血管です。
③毛細血管:物質交換をする血管
毛細血管は、動脈と静脈をつなぐ非常に細い血管で、全身の血管の約99%を占めるといわれています。
ここで初めて、酸素や栄養、ホルモンが細胞に届けられ、同時に老廃物が回収されます。つまり毛細血管は、血液の“通過点”ではなく、 私たちの身体を支える重要な物質交換の場といえます。

血管は道路に例えられる
血管は、人間の体の隅々を巡る「道路」に例えることができます。
この道路が、頑丈でありながら柔軟であることが、健康を保つうえで非常に重要です。
この道路網のうち、高速道路や国道にあたる 大血管(動脈・静脈) は、全体のわずか 約1% に過ぎません。
残りのほとんどは、生活に欠かせない細い道のいわば生活道路にあたる「毛細血管」です。
この毛細血管が傷ついたり、流れが悪くなったりすると、そこから栄養を受け取っている細胞や内臓の組織の働きに、直接的な影響が及びます。
大きく太い血管ももちろん大切ですが、実際に私たちの体を支えているのは、末端の毛細血管なのかもしれません。
「血液サラサラ系」の薬は毛細血管を良くしてくれる?
病院で処方される、いわゆる「血液サラサラ系」のお薬は、主に血栓を防ぐことや大きな血管の詰まりを予防することを目的としています。
・抗血小板薬:アスピリン、クロピドグレル(商品名:プラビックス)、プラスグレル(商品名:エフィエント)など
・抗凝固薬:ワルファリン(商品名:ワーファリン)、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)、エドキサバン(商品名:リクシアナ)など
これらの薬は、脳梗塞や心筋梗塞など、命に関わる病気の予防にとって非常に重要な役割を果たしています。
一方で、これらの「血液サラサラ系」の薬は、毛細血管の巡りそのものを良くしたり、傷んだ毛細血管を修復することを目的とした薬ではありません。
そのため、血液サラサラ薬を飲んでいても
・肩こりが楽にならない
・冷え性が改善しない
・腎機能が改善しない
・しびれや慢性的な痛みが残る
といったことがよく起こります。
これは、大きな血管のトラブル予防と、毛細血管レベルの巡りの改善は、目的がまったく異なるからです。
中医学の血液サラサラ「活血化瘀(かっけつかお)」
中国では古くから「瘀血(おけつ)」を重要な病態の一つと考え、この瘀血を取り去る治療法として「活血化瘀(かっけつかお)」 という考え方が確立されてきました。
活血化瘀とは、単に血液を薄めることではなく、血を本来あるべき状態に戻し、巡りを回復させる方法 を指します。
<活血化瘀>
・活血:血液を活き活きとさせ、血液循環を良くさせる
・化瘀:滞ってしまった血を取り除く
◆「活血化瘀」に用いる代表的な生薬
・丹参(たんじん)
・桃仁(とうにん)
・紅花(こうか)
・川芎(せんきゅう) など
特に 丹参 は、活血化瘀薬の中でも非常に重要な生薬です。
中国では古くから、心臓や脳の血流改善、瘀血体質の改善を目的として用いられてきました。現在では、中国国内を中心に 多くの基礎研究・臨床研究 が行われており、
・血流改善
・微小循環(毛細血管レベル)の改善
・抗酸化作用
・血管内皮機能への作用
などが報告されています。
そのため丹参は、「毛細血管レベルの巡り」にアプローチできる生薬として、現代的にも注目されている存在です。
しかし、病院で処方される保険適用の漢方薬の中には、丹参を含有する処方はありません。これは、丹参の有用性が低いという意味ではなく、日本の医療制度上、保険漢方として採用されていないという理由によるものです。
そのため、丹参を用いた活血化瘀のケアは、漢方薬局や漢方専門の相談薬局でのみの扱いとなります。
※丹参を使用した漢方薬の例:冠元顆粒(かんげんかりゅう)
https://kangen.iskra.co.jp
瘀血の原因は?
中医学では、「瘀血」は「二次的病理産物」と考えられています。つまり、最初から瘀血があるのではなく、何らかの原因によって生じた結果として瘀血が生まれます。
上記でご紹介した「瘀血の木」で示したように、瘀血が生じる原因は一つではなく、さまざまな要因が重なって起こります。
代表的な原因には、次のようなものがあります。
・気虚(ききょ):血を巡らせるエネルギーが不足している状態。川でいえば、水を押し流す勢いが弱い状態です。
・寒邪(かんじゃ)/ 陽虚(ようきょ):冷えにより血の巡りが悪くなっている状態。川でいえば、水が冷えて凍りつき、流れが止まりやすい状態です。
・血虚(けっきょ)/ 陰虚(いんきょ):血が不足し巡りが悪くなっている状態。川でいえば、水そのものが少なく、栄養も乏しい状態です。
・気滞(きたい):気が滞り血の流れも渋滞した状態。川でいえば、川幅が狭くなり、流れが滞っている状態です。
・痰湿(たんしつ):余分な水分や老廃物が溜まり血の流れを邪魔している。川でいえば、ヘドロやゴミが溜まり、流れが悪くなっている状態です。

また、中医学には「久病必有瘀」や「腎虚必有瘀」という言葉があり、慢性的な疾患や加齢により生じた症状には必ず「瘀血」が潜んでいます。
だからこそ、単に症状だけを見るのではなく、「なぜ瘀血が生じたのか」という原因に目を向けること が、活血化瘀を行ううえで非常に重要なのです。
最後に
中医学の基本的な考え方に「未病先防(みびょうせんぼう)」 という言葉があります。
これは、病気になってから治すのではなく、病気になる前の段階で体のバランスを整え、未然に防ぐという考え方です。
今回お伝えしてきた「瘀血」も、まさに未病の段階で気づき、向き合うことができるサインの一つです。
身体のメンテナンス方法には、食事や運動、睡眠、ストレスケアなど、さまざまな選択肢があります。その中の一つとして、ご自身の体質や状態に合わせた「漢方薬」 を取り入れてみるのも、一つの方法ではないでしょうか。
血を巡らせることは、今の不調を和らげるだけでなく、これからの身体を守ることにもつながります。日々の生活の中で、ご自身の体が出している小さなサインに、ぜひ目を向けてみてください。
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👨⚕️薬剤師 / 国際中医専門員 中目 健祐
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